季節の一枚

最近の撮影より


歓喜の詩
歓喜の詩 《平成30年4月下旬》
日本中が大騒ぎする桜の季節。 なかなか重い腰が上がらず機を逸し、と言うか、立派な古木や散り際の風情などを除けば、個人的には“特別に美しい”とまでは感じていないのも確か。 世間的に一番人気のソメイヨシノの並木に至っては、人混み嫌いという理由もあるのか訪れたいという気も、実はあまりないのです。
そんなひねくれ者が愛して止まないのは、芽吹き直後の淡い山肌。 ぽつぽつと咲き乱れる山桜と、日に日に色彩を増して行く若葉の薄緑。 絵的にはある程度鮮やかさを増した初夏間近の新緑が好まれるのでしょうが、わたくしは芽吹き直後の、色が有るか無いか位の時期が一番、胸躍る瞬間と感じる様になりました。
今回は此の処、改めて関心を増し始めた板谷峠を再訪。 早春の米沢方に続いて、フィルム時代以来になる福島方の作品を充実させたいと、お得意の高速道(音羽蒲郡〜山形蔵王)定速度(通常は燃費の良い約80km/h・今回は時短で約95km/h)無休憩ノンストップで、“散り際”の霞城公園に寄りつつ、その日の内に峠入りしました。
主たる撮影地は花咲く庭坂の果樹園一帯と、汽車の止まらなくなった赤岩駅周辺。 その移動途中にも著名な撮影地が点在しているのですが、年々木々の成長で撮りづらくなって来ています。 鉄路を俯瞰できる数少ない地点から二日三日と色々撮ってみたものの、線路際の樹木と架線柱の位置関係がどうにも具合が悪く、思い通りの画角を選べません。
ほぼ諦めの最終日帰り際、連日自動車が停められている急な曲がり角付近の広場反対側背後の崖の上に駄目元で登ってみる事に。 目指すは、比高十五メートル位はあろうかと思われるコンクリートで固められた擁壁の上。 そばの急斜面を偵察がてら試し登り。 途中には、麓集落のささやかな水道施設があり、崩れて多少難儀な登り口を除けばそれ程歩きにくくもない快適路。 どうやら皆さん、ここに来ていたのかな? それにしては近日中の踏み跡らしきものはなかった様だけれど。
とにもかくにも、眼下には道路上からは今やほとんど目に出来ない松川の流れ。 その先に別角度からあれこれ悩んで撮っていた線路が望めました。 生憎、時間的にも画角的にも、流れを入れての作品は撮れそうにはない(絵に出来そうにはない)のだけれど、背後に沈み行く西日に輝く、お気に入りの作風には何とかまとめられそう。 後は汽車の時間次第。 どんどんと陽の当たる面積が少なくなる中、米沢行きの普通電車が峠目指して駆け上って行きました。


この作品の詳細な撮影情報等をお知りになりたい方は、こちらからご連絡ください。

BILD ARCHIV 前回の一枚
平成30年3月 季節の鼓動

BILDERGALERIE 季節の一枚 作品一覧
季節の一枚 BILDERGALERIE


このページを閉じる

無断転載・複写等を禁じます。